自覚症状のないまま進行する歯周病

30歳以上の人が歯を失う最大の原因をご存知でしょうか。
その原因として一番多いのは、虫歯と歯周病だと言われています。

歯周病とは、歯の周りの歯周組織(歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質)が歯周病細菌の感染により炎症を引き起こしている病気の総称です。

「歯肉炎」と呼ばれる初期の段階では、炎症が歯肉のみの状態ですが、歯肉炎の炎症がさらに進行し歯周組織の破壊が進むと「歯周炎(歯槽膿漏)となります。歯周炎では歯槽骨や歯根膜にまで炎症が及び、悪化すると歯槽骨が歯を支えきれず、歯がぐらつき始める場合もあります。

歯周病は、痛みや腫れといった自覚症状が少ないまま進行してしまう特徴から「沈黙の病気=Silent Disease」とも呼ばれています。

セルフチェックで症状がないか確認しよう

近年ではそうした自覚症状のないものを含めると、日本では成人の90%以上の人が歯肉に何かしらの問題を抱えていることが分かっています。
また、歯周病は成人に多く発症する病気ですが、最近では小中学生のお子さんにも見られます。

自覚症状のない方も、まずはお口の状態をセルフチェックしておくことが重要です。
以下の項目に1つでも心あたりのある方は、早めの検診をお勧めします。

  • 歯肉が退縮して、歯と歯のあいだにすき間ができてきた
  • 歯が長く伸びてきた(歯茎が下がっている)
  • 歯ぐきが少し腫れている
  • 歯の動揺がある(グラグラする歯がある)
  • 歯みがき時などに歯肉から出血しやすい。
  • 人から口臭があると言われる。
  • 起床時に口が苦く、ネバネバして気持ち悪い。
  • 歯肉が、疲労時やストレスがかかっているときに腫れやすい。
  • しばらく歯科検診を受けていない(1年以上)

他の病にも関連性をもつ歯周病

重度の歯周病になると、口の中だけでなく全身に多くの影響を及ぼすことが昨今の研究で明らかになってきています。

よく知られているところでは、糖尿病や心臓病との関連性です。
いずれも健康な人と比べると発症のリスクが高いことがわかっていますが、糖尿病については、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきています。

また歯周病の妊婦さんは、健康な人よりも早産や低体重児出産の確率が高いことがわかっています。その他にも、がんや肺炎、脳卒中などとの関連性も指摘されています。このように、歯周病はときには命の危険にもつながる可能性のある病気です。

ですから、歯周病を治療、予防することが全身の病を予防することにもつながります。

歯や歯ぐきに不調を感じない限り歯科医を受診しない、という方もいらっしゃいます。しかし症状がなくても、半年に一度は受診し口腔内のケアをするよう意識することが長きにわたり全身の健康を維持するために大切です。

阿佐ヶ谷雪下歯科医院の歯周病治療について

歯科衛生士と連携して正しいセルフケアを

人の口腔内には、プラーク1gあたりに約1000億個の最近が存在すると言われていますが、歯周病の治療において最も重要なことは、歯周病の原因となるお口の細菌の数を減らすことです。さらに、歯周病菌が存在しにくいお口内環境を継続的につくっていきながら、その他の原因を一つずつ改善していくことが必要となります。

では、どうやって歯周病菌を減らせるのでしょうか?

それは、毎日の歯磨きなどを正しく継続することと、患者様ご自身の適切なセルフケアの実践が不可欠です。セルフケアが正しくできていなければ、歯周病の治療は成功しないのです。

当院では歯科衛生士と連携して、患者様のお口の状態に合わせた歯周病治療を行なっております。歯周ポケット内のプラークや歯石をキレイに取り除くとともに、正しいセルフケアの仕方をお伝えすることで、歯周病の改善をしっかりとサポートしてまいります。

歯周病の進行度合いに合った処置

歯周病の進行は、歯周ポケットの深さや歯茎の状態によって4段階のステージに分かます。

当院では、患者様の歯周病の進行度合いを確認し、それぞれのステージに合った適切な処置を行っています。

①歯肉炎

仮性ポケットと言われる状態で、歯槽骨に影響はみられない状態。歯周病の一歩手前の状態で、表面の炎症はありますが、まだ歯ぐきの骨にまで病気がすすんでない状態です。

②軽度歯周炎

歯周ポケットの深さが3~5mmあり、歯槽骨の破壊が始まっている状態。自覚症状はほとんどなく、見た目の変化も目立たないですが内部では確実に進行しています。

③中等度歯周炎

歯周ポケットの深さが4~7mmあり、歯根の半分くらいまで歯槽骨が破壊されている状態。歯ぐきの骨が溶けてなくなる量が多くなり、歯ぐきの中の歯石もレントゲンで確認でき、自覚症状もでてきます。

④重度歯周炎

歯周ポケットの深さが6mm以上で、歯根の半分以上の歯槽骨が破壊されている状態。食事も食べにくくなり、ここまで来ると歯を残せない可能性がでてきます。

「軽度」歯周病に対する治療

まずは歯のクリーニングを行い、プラークや歯石をきれいに除去します。
数回の通院で歯茎からの出血は治まり、歯茎が引き締まって本来の状態を取り戻すことが可能です。

「中度」歯周病に対する治療

深さが3~5mmになってしまった歯周ポケットの奥に、歯石や汚れがこびりついている状態なので、特殊な器具を用いて入れてそれらを取り除く「ルートプレーニング」という治療を行います。治療時には出血や痛みを伴いますので、麻酔を使用して行います。

歯周病外科治療について

歯周外科治療の種類

フラップ手術について

フラップ手術とは、歯茎を切開して歯根や歯槽骨を直視下で確認しながら、歯周ポケットの奥深くにこびりついた歯石やプラーク、感染組織を徹底的に除去する手術です。SRPでは到達が困難な部位まで清掃が可能となるため、重度歯周病への対応として重要な位置づけとなっています。

術後は、切開した歯茎が治癒するまでに数週間を要しますが、歯周ポケットが浅くなることで、縁下歯石の再付着が起こりにくくなり、長期的な歯周組織の安定が期待できます。

歯肉切除術について

歯肉切除術は、腫れた歯茎の一部を切除することで、病的に深くなった歯周ポケットを改善する外科的手法です。ポケットの深さが即時に減少し、歯周病の進行を抑えることが可能となります。

ただし、この術式は歯肉の一部を切り取るため、術後に歯茎の位置が下がり、歯根面が露出することがあります。その結果、知覚過敏などの症状が一時的に現れることもあります。

歯周組織再生療法

歯周組織再生療法とは?

歯周組織再生療法は、歯周病や重度のむし歯によって失われた歯茎や歯槽骨といった支持組織を再構築することを目的とした治療法です。一般的にはフラップ手術と併用され、直接歯根部を視認しながら再生を促す処置が行われます。

また、この療法は歯周病治療に限らず、インプラント治療においても骨量不足が認められる症例に対して適応されることがあります。

どんなことを行うのか?

基本的な手技としてはフラップ手術に準じますが、歯周組織の再生を促進するために専用の生物学的薬剤を併用します。なかでも現在注目されているのが「β-FGF(製品名:リグロス)」という薬剤を用いた療法です。

この治療は、歯周病によって崩壊した組織の土台を部分的に再構築することを目的としており、大幅な骨の再生が常に得られるわけではないものの、症例によっては顕著な改善が期待されます。

どんな効果が期待できるのか?

当院では、再生医療用薬剤「リグロス」を用いた先進的な歯周再生療法を行っております。リグロスの有効成分である「bFGF」は、骨や軟部組織の細胞に対して増殖や分化を促す作用を持ち、歯茎および歯槽骨の再生を支援します。

加えて、bFGFには新しい血管の形成(血管新生)を促す働きもあり、再生環境の改善にも寄与します。

これまで歯周組織再生に用いられてきた複数の薬剤のなかでも、臨床的な信頼性と有効性が高いとされており、学術文献においても高い評価を受けています。

歯周組織再生療法ができないケース

歯周組織再生療法は、歯槽骨の破壊が中程度までに留まっている場合に高い効果を発揮します。一方で、歯槽骨が著しく失われてしまっている重度歯周病の場合には、再生の可能性が乏しく、適応外となることがあります。

また、重篤な全身疾患を有する方、あるいは抗凝固薬(血液をサラザラにするお薬)を服用中の方など、外科的処置にリスクを伴う患者様についても、再生療法が実施できない場合があります。

このように、歯周病の進行度や全身状態によっては、再生治療ではなく抜歯や他の治療を検討することが望ましいケースも存在します。

後悔しないための検診とメンテナンスを

むし歯や歯周病は、歯を失う原因の大部分を占めます。
特に歯周病は、自覚症状のないまま進行していく病気なので、症状が出たときは中度の進行となっていることも考えられます。

雑誌「プレジデント」によると、70歳以上の方が後悔していることの第1位が「歯の定期健診を受ければ良かった」というものでした。
お口や歯の健康は、年齢を重ねるごとにその大切さを感じさせられるものなのです。

後々後悔しないためにも、定期的な歯科健診とメンテナンスを受けることが重要です。予防に力を入れている当院では、衛生士の担当衛生士制を取り入れ、患者さまの健康な歯を継続してお守りしています。

歯周病を治すことで口臭も改善

年齢を重ねると、口腔内の口臭原因物質の濃度が高くなると言われています。その中でも一番考えられる口臭の原因は歯周病です。過去の研究で歯周病と口臭の間には高い相関性があることが知られています。歯周病の特徴は歯周ポケットができることですが、これが細菌の住みかとなります。細菌が代謝の過程で産生する硫化水素やメチルメルカプタンが口臭のもとになるのです。

このように、歯周病を治すことは、口臭対策にもつながります。口臭は自分で気付きにくいことから、知らないうちに周囲の人を不快な気分にしている可能性がありますので早めの治療を心がけましょう。